演奏会雑録帳
2001年以前に行った演奏会の感想です。本体記事と重複してるものもあります。
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ジュゼッペ・シノーポリ&ウィーン・フィルハーモニー日本公演(1992)
今回ご紹介するDVDの公演にはじつはちょっと複雑な印象をもっている。

この公演はウィーンフィルの創立百五十周年記念ツアーとして行われたものの一環でして、当初はバーンスタインによるものとして予定されていたのですが、1990年にバーンスタインが急逝したためこの公演はカルロス・クライバー指揮により挙行されることとなりました。

初のクライバーとウィーンフィルの組み合わせによる来日ということで、このクライバー四年ぶり五度目の公演の人気はたいへんなものがありました。ですが来日前に突如クライバー急病のため来日不可、指揮者がシノーポリに変更となってしまいました。(この前月のテンシュテットとロンドンフィル公演も、来日後テンシュテットが体調不良に陥り指揮不能の為緊急帰国ということがありました。)

自分もせっかく電話をかけまくってやっと取ったチケットがパーになったと、当初はガッカリしたものでしたが、曲目がシノーポリお得意のシュトラウスとマーラーという豪華版ということで、これはこれでけっこうよかったかもという気持ちにすぐになり、当日を楽しみに待ちました。因みに自分にとってウィーンフィルは77年のべーム以来じつに15年ぶりの公演でした。

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NSDS12958

3月10日:サントリーホール
R・シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」
マーラー/交響曲第1番ニ長調「巨人」

トップにはヘッツエルとキュッヒェルの二人が並ぶというこの顔ぶれもなつかしく、特にヘッツェルは前年ホルライザーの指揮によるバルトークの協奏曲を聴き、この奏者の素晴らしさをさらに痛感していただけに、その顔がおがめただけでもなんか嬉しいものがありました。

冒頭いきなりおそろしくスリリングで、しかも力強い音が鳴り響きかなりびっくり、これは素晴らしいと瞬間思ったものですが、曲が進むにつれその気持ちが少しずつ違和感のそれに変わっていきました。たしかに凄い部分もあるし熱いし、迫力も強い歌いぬきもある演奏ではあるのですが…。

ようするになんといいますか、シノーポリとウィーンフィルのそれがどこかしっくりいってないのです。シノーポリはウィーンフィルとは初来日ではあるものの、決してその関係はここまで少なくないし、シノーポリのデビュー盤となったウィーンフィルとのシューマンの交響曲第2番は、当時なかなかの話題盤となっていました。しかもこの日の公演はこれで来日中同プロ三回目の演奏であるため、練習不足による意志の疎通云々という問題も無いはず。となるといったいこの違和感はなんだろうということになったのですが、どうもそれはトゥッティ以外のところでの、特にその弦の歌いまわしやもっていきかた両者は決定的な考えの違いがあるのではないかと感じられはじめたのです。

つまりウィーンフィルは綿々と歌いぬき、そのフレーズを息長く紡ぎ、そこから劇的なものなどを描いていきたいのに、シノーポリは細かく表情の違う音を積み上げ、それにより感情の陰影や起伏を劇的に描き出そうとしているため、結果的には両者劇的にもっていこうとはしているものの、その過程が相容れないほど決定的に違うためなかなかうまくかみあわない。1969年のショルティとウィーンフィルの来日公演で、ショルティの強引さによりウィーンフィルのよさがでていないという評があったのを、ふと思い出してしまったものでした。

ですがシノーポリは以前バイロイト音楽祭で来日したときに聴いた「パルシファル」におけるそれで、なかなかじっくりとした音楽を聴かせてくれることもあり、決して強引一辺倒の指揮ではないはずなのだが、この日のそれはもう自分の哲学にのってオケを猛烈にドライブしまくっていました。

このDVDでもシノーポリの手数の多い指揮ぶり、それを見ているのか見ていないのか、なんとも微妙な温度差を表情に出しながらその棒についていくウィーンフィルの面々の、そのコントラストがなんともいえないものをみせています。結果的にはかなりシノーポリよりの音楽が形成されていたのですが、随所にウィーンフィルらしいしなやかさも表出されている演奏となっています。ただどちらにとっても会心とは言い難い演奏であったようで、オケの面々からもその雰囲気が伝わってくるように感じられました。

ただしこの演奏。これは決して凡演というわけではなかったような気がしますし、ある意味指揮者とオケの激しいせめぎあいの結果おきた演奏という気がします。そしてそれ以上に、もしこの両者がこの曲の解釈でもっと時間を割き、腹を割って話し合い、納得できる状況まで音楽を推し進めていたら、これはとんでもないほどの超名演になったのではないか、もしくは今回のこの公演そのものが、この組み合わせが後々とんでもないほどの凄いものになっていく可能性を秘めた、ひとつのきっかけとなるはずのものではなかったのかという気が、今回このDVDから強く感じたものでした。

ですがこの公演後の同年夏にはコンサートマスターのヘッツェルが事故で急逝。(当時来日していたウィーンフィルのあるコンサートマスターは、この一報を練習会場で受けたところ「おそろしいことが起こった!」と絶句し顔面蒼白となり震えていたとのことでした。)そしてシノーポリも2001年公演中に急逝されるということで、その後の超名演誕生、そしてより凄いほどの組み合わせへの発展の可能性を幻としてしまいました。

当時はいろいろと言われた賛否半ばしたような公演でしたが、今こうしてみるとほんとうにいろいろと興味深いものが感じられるものがありますし、当時46歳だったシノーポリの多様にして激しいまでの曲への斬りこみは、これはこれで圧巻なものがあります。

因みにシノーポリは健在であれば現在(2009)63歳。やはり早すぎます。



3月5日:大阪フェスティバルホール
R・シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」
マーラー/交響曲第1番ニ長調「巨人」

3月6日:大阪フェスティバルホール
シューベルト/交響曲第7番ロ短調「未完成」
ブルックナー/交響曲第7ホ長調

3月7日:名古屋市民会館
R・シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」
マーラー/交響曲第1番ニ長調「巨人」

3月9日:NHKホール
R・シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」
マーラー/交響曲第1番ニ長調「巨人」

3月10日:サントリーホール
R・シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」
マーラー/交響曲第1番ニ長調「巨人」

3月12日: NHKホール
シューベルト/交響曲第7番ロ短調「未完成」
ブルックナー/交響曲第7ホ長調

3月13日: NHKホール
シューベルト/交響曲第7番ロ短調「未完成」
ブルックナー/交響曲第7ホ長調
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