演奏会雑録帳
2001年以前に行った演奏会の感想です。本体記事と重複してるものもあります。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

オイゲン・ヨッフム&バンベルク交響楽団日本公演1982(DVD)
5.jpg


オイゲン・ヨッフム/バンベルク交響楽団

[DVD番号/ALTDVD-001]

 ヨッフムは1960年の初来日から1970年に至るまでの足掛け11年間に五度も来日しており、そういう意味では60年代最も日本で御馴染みの指揮者のひとりとなっていたようですが、なぜかそれ以降ピタリと来日が途絶えてしまいました。その間EMIにベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーといった19世紀の交響曲三大Bの交響曲全集を録音し健在ぶりを示してはいたのですが。
(当時口の悪い知人と、当時EMIに全集物を次々と録音し続けていたマルティノンとケンペが立て続けに急逝されたとき、「おいおい次はヨッフムじゃないだろうな。来日もぜんぜんしてないし。」と言っていたほどでした。)

そんな1981年の秋。翌1982年の9月にヨッフムがバンベルク交響楽団を率いて12年ぶりに来日し、ブルックナーの8番を指揮するという情報が入ってきました。8月に前年秋に来日していたカール・べームが86歳で逝去、他にもムラヴィンスキーの来日中止、カール・リヒターやキリル・コンドラシンの急逝などで、多くの日本の音楽ファンが落胆していただけに、この報は多くのファンにとってたいへんな朗報となりました。ヨッフムはこれまでブルックナーを62年に5番、68年に4番と指揮。そして今回いよいよ大曲8番とあいなったのですが、この1982年の公演におけるブルックナーは同曲の日本演奏史上最高のもののひとつと讃えられるほどの超名演となりました。

 ヨッフムの実演は録音とかなり印象の違うものがあります。もちろん録音年と実演時の年齢の差もありますが、やはりこの指揮者も実演で本領発揮をするタイプの典型のようです。ここでは他の頁に書いてるヨッフムについての拙文を多少加筆して書き込むこととします。

 ヨッフムが来る。にもかかわらず当時79歳の巨匠の12年ぶりの来日は、前評判はけっして高くありませんでした。それはこれまたカイルベルトの最後の来日以来、14年ぶりの日本公演となったバンベルク響の知名度の低さというのが原因のひとつでもありました。EMIに録音されたベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーの交響曲が評判をよんでいたのにもかかわらず。じつは私はこれらの演奏に当時ビンとこず、当初この公演に行く気持ちがなかったのですが、「ヨッフムの実演は凄い。録音と比較してはいけない。」という言葉を耳にし、行くことにしたものでした。

ところで現在発売されているCDは残念ながらそのときの印象とはかなり違うものがあります。かろうじて第三楽章にその片鱗が伺える程度なのですが、今回紹介しますDVDはそれに比べると視覚的なものがあるせいか、より実演時に近い印象をうけました。ただやはりトランペットのやや出すぎたバランスや、中低音弦の生き物のような動きの凄みや、トロンボーンのオケにブレンドされた厚めの響きなどはほとんど聴き取ることは出来ないようですが、カメラそのときそのパートを映してくれていると、その動きで実演経験が豊かな方にはある程度補正していただけると思えるのですが…。


1982バンベルク交響楽団

9月15日:NHKホール
ブルックナー/交響曲第8番


演奏会当日NHKホールは満員となりました。公演が近付くにつれこの偉大な指揮者の名前が次第に底力を発揮したようでした。指揮台には椅子が置いてありベームが82歳でも立って指揮していたことを思うと、「ヨッフムは体調が悪いのか」と、開演前に妙に気になったものでした。この時自分はあえて三階の中央後方の席をとりました。それはこの場所で五年前に、ベーム、ショルティ、ムラヴィンスキーを聴いた場所であり、それらと同一状況で聴いてみたいという気持ちあったからです。

 オケが登場した後、ヨッフムが登場。この時の雰囲気はベームやムラヴィンスキーとの時のそれと違い、ごく自然な雰囲気で登場し万雷の拍手を浴びて登場し、そしてオケに向かってふりむき指揮台の椅子に腰掛けました。

 第一楽章冒頭部。飾り気の無い、それこそ質実剛健な木造建築のような、しかも充分練込まれたような音が鳴った時、正直驚いてしまいました。このようなある意味ローカルとも形容したいような音というのに、この時初めて接したからなのかもしれません。ただそれは最初だけで、すぐこの演奏の持つただならぬ雰囲気と、厳粛な儀式のような趣、そして激しい気迫のようなものに圧倒されてしまいました。また低音弦の刻む独特の弾力感がまた強い緊張感を与えていたことが、今回のDVDをみていて久しぶりに思い出されたものでした。

 第一楽章終了時、ひょっとしたら自分はとてつもない音楽の創造に立ち合っているのではないかという思いがし、突然もの凄い緊張感に襲われました。第二楽章はそのような状態で聴いていたのですが、楽章終了後ものすごく自分が情けなくなってしまいました。というのはこのほとんど圧倒的な情報量を持った音楽が大河のごどく流れてくるのに、それを受ける自分の許容量が洗面器程度しかないように感じたからです。

「なんということだ。しかもあと二つしか楽章がない。」

 第三楽章。最初の音が響いた瞬間、突然ホールが薄暗くなったような錯覚に陥りました。その分厚くしかも清澄な響きがそう感じさせたのでしょう。金管の分厚い咆哮もたしかにありましたが、なぜかとにかく自分にはこの時間がじつに静かに、そしてどこまでも暗くそして澄んだ音楽が奏でられていたように感じられました。

その後音楽は次第にシンバルの響きへと登りつめ、そしてひいていきました。このときの最後の延々と奏でられた壮大な黄昏の音楽。まるでミレーの晩鐘の祈りを思わせるような珠玉のような時間。そしてそれを紡ぐ指揮者の舞台上に長くそして深く垂れた影を私はじっとみつめていました。今回のDVDにも少しですがその影がとらえられていましたが、これを四半世紀ぶりにみられただけでも嬉しかった。

 第四楽章。まさに激烈かつ壮大な演奏でした。とくにコーダ、巨大な音楽そのものが突然「立ち上がり」、ホール全体を見下ろすかのように鳴り渡ったのです。それはベームがたたき出し、ムラヴィンスキーがひっぱりあげるようなものに対し、オケを下から根こそぎ持ち上げるような感じの巨大さでした。(特にトロンボーンの巨大な響きは空前のものがありましたが、残念ながらこのDVDでもそれはほとんど飽和した音として響き、別物に近いものとなっていました。これはマイクの位置の関係もあるのかもしれません。それにしてもトランペットが強調されているのはともかく、中音域から低音域が、オケが激しく咆哮すればするほど、軽いというかやせた響きになっているのがじつに残念。ほんとうにこんな音が実際鳴ってたら、あの終演後の嵐のような歓声など絶対にありえない!ただし唯一終楽章コーダの最後の音のみ、その超ド級の質量感をわずかながら感じさせてくれているのが救いとなっています。)

 演奏終了後、激しい歓声と拍手が嵐のように鳴り響きましたが、その時自分は座席に座ったままじっとしていました。それは完全に圧倒されたという感覚、自分がこの演奏の多くを受けきれなかったという無念さ、そして「音楽は完成した瞬間に消滅するという」という現実をあらためて痛感したからでした。指揮者は何度も舞台に呼び出され、最後は一人でスタンディグオベーションに応えていました。この時誰か一人が舞台をかけ上がりヨッフムに握手を求めました。ホールの舞台手前は階段上になっていたので、あがろうと思えばあがれたのです。そしてその後次々と握手をもとめる人達が舞台をかけ上がっていきました。 その後ヨッフムは舞台を去りホールから人も去っていきましたが、私はまだその時もホール内を呆然と見渡していました。それはまだホールのあちこちから感じられる、今消えたばかりのばかりの響きの余韻のすべてが消えうせるまで、それをできるかぎり見届けようと思ったからです。

  この公演たしかにオケに実演におけるミスがなかったわけではありません。が、自分にとってあの公演は生涯最高のもののひとつなっています。今でもNHKホールに行くと、たまに三階後方からホール内全体を見つめることが正直今でもあります。ただしある種の無念さも感じてではありますが。

 ところで今回のDVDをみて思ったことに、ヨッフムがやはり四年後のコンセルトへボウ公演時よりもずっと若々しく、しかも指揮も大きく情熱に満ち、てきぱきとしていたということです。

もちろん曲のせいもあるのでしょうが、指揮が大きいせいかオケの呼応の仕方も破格に大きなものが感じられました。この五日後に行われた大阪公演での同曲も、同じかそれ以上練りこまれた、至上の演奏が展開されたのではないでしょうか。

この後、私は19日にある横浜でのオール・ベートーヴェン公演のチケットを急遽購入しました。そしてこの公演もまた忘れ難いものとなりました。(ここで当日券が手に入るということがこの公演の当時の人気がおわかりになるかと思われます。ブルックナーのFM生放送があったにもかかわらずです。)


(バンベルク交響楽団/
指揮者:オイゲン・ヨッフム、レオポルド・ハーガー)

9月15日:NHKホール/ヨッフム
ブルックナー/交響曲第8番

9月16日:東京文化会館/ヨッフム
ベートーヴェン/エグモント、序曲
ベートーヴェン/交響曲第6番
ベートーヴェン/交響曲第7番

9月17日:聖徳学園川並記念講堂/ヨッフム
ベートーヴェン/エグモント、序曲
ベートーヴェン/交響曲第6番
ベートーヴェン/交響曲第7番

9月19日:神奈川県民ホール/ヨッフム
ベートーヴェン/エグモント、序曲
ベートーヴェン/交響曲第6番
ベートーヴェン/交響曲第7番

9月20日:フェスティバルホール/ヨッフム
ブルックナー/交響曲第8番

9月21日:名古屋市民会館/ヨッフム
ベートーヴェン/エグモント、序曲
ベートーヴェン/交響曲第6番
ベートーヴェン/交響曲第7番

9月22日:沼津市民文化センター/ハーガー
モーツァルト/交響曲第38番
Rシュトラウス/ドン・ファン
ブラームス/交響曲第1番

9月24日:習志野文化会館/ハーガー
モーツァルト/交響曲第38番
Rシュトラウス/ドン・ファン
ブラームス/交響曲第1番

9月25日:昭和女子大人見記念講堂/ハーガー
ウェーバー/魔弾の射手、序曲
モーツァルト/交響曲第41番
ドヴォルザーク/交響曲第8番


9/27-29の三日間はハーガーの指揮により
香港のシティ・ホールで公演。
スポンサーサイト

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



ブログ内検索



カテゴリー



カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -





上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。