演奏会雑録帳
2001年以前に行った演奏会の感想です。本体記事と重複してるものもあります。
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オイゲン・ヨッフム&アムステルダム・コンセルトヘボウ日本公演(DVD)
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オイゲン・ヨッフム/アムステルダム・コンセルトヘボウ

9月16日:東京文化会館
ワーグナー/トリスタンとイゾルデ、前奏曲と愛の死
ブルックナー/交響曲第7番

9月17日:昭和女子大人見記念講堂
モーツァルト/交響曲第33番
ブルックナー/交響曲第7番


 1982年のヨッフムとバンベルク響との来日公演は、その後も自分にとってひとつの大きな事件となり続けていましたが、それからしばらくヨッフム来日の噂が無いまま数年の月日が流れました。オイゲン・ヨッフムというとその柔和な表情が印象的ですが、実際はたいへんな練習好きで有名でした。ただしその人柄からくるのかオケもそれを苦とおもわず、結果としてでてくる音楽はそういう練習の痕跡より、音楽の自発性と生命力を感じさせるものとなっていました。それがまた忘れられないものとなっていたのですが、とにかくその後ヨッフムの来日の話はなかなか伝わってこず、ひょっとしてあのときのヨッフムが最初で最後になるのかなあと思い始めていた1985年の秋、ヨッフムがこれまた9年ほど来日が途絶えていた名門アムステルダム・コンセルトヘボウと翌1986年9月に来日するという報が流れてきました。これは本当に待望の来日公演なのですが、この1986年は1977年とはまた違った意味でとんでもないほどの海外オーケストラ来日公演当たり年でもあり、このコンビの組み合わせがさして目立たないほどでしたが、それでもこの公演は秋の公演のひとつの目玉となりました。
※(「1986年を回顧する」)
                                                                                     今回はヨッフムが指揮する全5回全ての公演でブルックナーの交響曲第7番が演奏されるという異例のものでした。正直その前例の無い公演プログラムに正直驚いたものでしたが、この86年の交響曲第7番の演奏は、前回の交響曲第8番同様圧倒的な名演となりました。(因みにはこれまでブルックナーを62年に5番、68年に4番、そして前回に8番を指揮し、今回の7番と相成ったため、一度もブルックナーに関しては「再演」がありませんでした。)

今回ご紹介のこの公演のDVDは東京公演二日目の昭和女子大人見記念講堂でのもので、前半にモーツァルトの交響曲第33番が演奏されていますが、この前日には東京文化会館において前半がワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲と愛の死、そして後半に交響曲第7番が演奏された公演が行われています。

初日はじつに清澄かつ不気味なほどの静かな緊張感をもった「トリスタン」が前半に演奏、そして後半ブルックナーとなったのですが、これがかなり気合入り捲くりの演奏でして、そのためオケが初日ということもあるのでしょうがその煽りをくって少々荒れ気味の音を出しているものの、その力強さと音の巨大な立ち上がり感は無類のものがありました。聴衆も熱狂的なスタンディングオべーションで、オーケストラが退場した後も、登場し続けるこの指揮者と、この演奏を讃え続けました。

こうしてこのDVDに収録されている二日目となります。

前日ほぼ満員だったのに比べると二階席の両サイドにかなり空席が目立つ位の入りで、心持ち前日より落ち着いた雰囲気が会場にありました。(自分も前日は緊張からか開演前に足が震えたりしたのですが、この日はそういうことはありませんでした。)

ヨッフムは前日もそうでしたがこの日も通常とは逆の、舞台向かって右側から登場し、ちょっと独特の長椅子?に座って指揮を行いました。

四年前より多少お年を召したよううに見受けられたものの、最初のモーツァルトからじつに瑞々しく活気のあるものとなっていました。それにしてもオケの手作り的な光沢がじつに素晴らしい。以前コンセルトヘボウが来日したとき言われていた宣伝文句が「オランダ絵画を思わせるような重厚な響き」「世界で一番美しい音のオーケストラ」というものでしたが、この明朗快活にして生命感溢れるモーツァルトにおいて、それらはまさに看板に偽りなしという感じがしたものでした。

ヨッフムの指揮ぶりは痩身ではあるものの堂々とした風格豊かなもので、譜面をめくるとき、ちょっと昔気質風の今ではちょっとお目にかかれないようなめくり方をするものの、矍鑠とした指揮ぶりが目に付くものでした。かつてのべームのような無骨なものではなく、むしろ流麗な部分が多く見受けられるものの、べーム同様「ここ」というときは極めて気合の入った指揮で音楽を奮い立たせていました。

これは特に後半のブルックナーにおいて顕著でして、初日に比べやや落ち着いた雰囲気の演奏ではあったこの日の演奏でも、その指揮ぶりはじつに力強いものがありました。特にヨッフム自身がこの交響曲全曲の頂点と位置付けている第二楽章のシンバル付近では、シンバルの一撃に向かって音楽が高揚していくにつれ、ヨッフム自身も立ち上がって指揮するほどの力の入れようで、みていてこちらも熱くさせられるものがありました。(ただしこのシンバル。この日のそれはオケのトゥッティにやや埋没加減に鳴らされていましたが、前日の公演ではよりハッキリと強く鳴らされていました。)

このブルックナー、演奏時間も70分を大きく超える長大なものになったにもかかわらず、その密度の濃さは無類のものがあり、この日もそのオーケストラの立ち上がりの巨大さなど空前とすら思えるものがあり、とにかく圧巻、とにかく規格外の演奏となっていました。終楽章のコーダに入る前の全合奏など、まるでオーケストラ全体がひとつの巨大なパイプオルガンのように鳴り響き、ホール全体を共鳴させたのには、もはや圧倒を通り越し驚愕させられてしまいました。

聴衆の反応は一部やや場違いと思われても仕方の無い反応をされている方がいらっしゃったものの、総じて前日よりも落ち着いた反応に終始していました。前日あったスタンディングもほとんどみられることはありませんでしたが、これが逆に音楽の余韻を残すものがありました。

 こうしてこの公演は大成功に終わりましたが、不幸にしてこの日本公演最終日(大阪フェスティバルホールでの9月26日の公演)のちょうど半年後の3月26日、巨匠は惜しまれつつこの世を去ってしまいました。たしかに舞台ではしっかりとした足取りで歩いていましたので(DVDに収録されているインタビューではじつに張りのある明るい声で話されています)、ちょっとその報に信じられないものがありましたが、後に演奏会が終わると一人で歩けない状態になったこともあったということを聞いた時、むしろよくこの公演が実現されたものだと思ったものでしたし、日本に来てくれたヨッフムに深い感謝の念を抱いたものでした。

 オイゲン・ヨッフムはある意味偉大な司祭だったような気がします。聴いた人々をすべて幸福にし、そしてより優れた存在とするような福音を、音楽をとおしてふりまいていったような気がします。80年を超える人生の積み重ねの上になりたち、そしてそこから多くの人々に福音を与えてくれた司祭オイゲン・ヨッフム。亡くなられた時にNHKはその年のはじめに放送した前年の来日演奏会とインタビュー(当DVD収録)を再度そのまま放送し、その冥福を祈りました 

 このDVDはそんな一人の指揮者による福音の記録としても、末永く大事にされ続けてほしいと強く願っています。
 
 余談ですが、この年のコンセルトヘボウ公演におけるコンサートマスターは、かつてレニングラードフィルの第一コンサートマスターとして活躍し、ムラヴィンスキーとも三度来日した名手ヴィクトル・リヴェルマン。カルロス・クライバー指揮によるコンセルトヘボウとのベートーヴェンのDVDでもその姿がありましたが、今回彼もコンセルトヘボウ同様9年ぶりの来日をはたしました。リヴェルマンは、1977年のムラヴィンスキーとのチャイコフスキーの5番、そして今回のブルックナーの7番におけるコンサートマスターの大役を果していたということで、個人的にたいへん印象深いコンサートマスターとなっています。

(アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団/
指揮者:オイゲン・ヨッフム、ウラディミール・アシュケナージ)

9月16日:東京文化会館/ヨッフム
ワーグナー/トリスタンとイゾルデ、前奏曲と愛の死
ブルックナー/交響曲第7番

9月17日:昭和女子大人見記念講堂/ヨッフム
モーツァルト/交響曲第33番
ブルックナー/交響曲第7番

9月18日:昭和女子大人見記念講堂/アシュケナージ
ドヴォルザーク/交響曲第8番
ラヴェル/道化師の朝の歌
ドビュッシー/海

9月19日:長岡市立劇場/アシュケナージ
ラヴェル/道化師の朝の歌
モーツァルト/ピアノ協奏曲第17番(P/ウラディミール・アシュケナージ)
ドヴォルザーク/交響曲第8番

9月20日:福島市音楽堂/アシュケナージ
ラヴェル/道化師の朝の歌
モーツァルト/ピアノ協奏曲第17番(P/ウラディミール・アシュケナージ)
ドヴォルザーク/交響曲第8番

9月22日:千葉市文化会館/ヨッフム
ワーグナー/トリスタンとイゾルデ、前奏曲と愛の死
ブルックナー/交響曲第7番

9月23日:藤沢市民会館/アシュケナージ
ラヴェル/道化師の朝の歌
モーツァルト/ピアノ協奏曲第17番(P/ウラディミール・アシュケナージ)
ドヴォルザーク/交響曲第8番

9月24日:名古屋市民会館/アシュケナージ
ラヴェル/道化師の朝の歌
モーツァルト/ピアノ協奏曲第17番(P/ウラディミール・アシュケナージ)
ドヴォルザーク/交響曲第8番

9月25日:明石市民会館/ヨッフム
モーツァルト/交響曲第33番
ブルックナー/交響曲第7番

9月26日:フェスティバルホール/ヨッフム
ワーグナー/トリスタンとイゾルデ、前奏曲と愛の死
ブルックナー/交響曲第7番 
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テーマ:クラシック - ジャンル:音楽



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