演奏会雑録帳
2001年以前に行った演奏会の感想です。本体記事と重複してるものもあります。
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1988(昭和63年)
(クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィルハーモニー)

10月15日:市川文化会館

ベートーヴェン/エグモント、序曲
Rシュトラウス/ドン・ファン
ベートーヴェン/交響曲第3番


10月18日:サントリーホール

ワーグナー/タンホイザー、序曲とヴェヌベルクの音楽
ワーグナー/リエンチ、序曲
ワーグナー/神々の黄昏、ジークフリートのラインの旅
ワーグナー/神々の黄昏、ジークフリートの葬送行進曲
ワーグナー/マイスタージンガー、第1幕への前奏曲


 10月15日(土)の市川市文化会館における日本公演初日の日は、自分にとって今でも忘れることのできない一日となっています。朝起きてまず新聞をみ、公演の指揮者変更等の記事がでてないことを確かめまずホッとし、そしてその後出かけるまで、急にニュースが入るのではないかと、気になってたまらない状態が続きました。夕方会場最寄りの駅で降りた後、とにかくなんともいえない気持ちで会場へ向かいました。会場前に着くとそこには

「クラウス・テンシユテット指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会」

 という場違いなくらい大きな立て看板が、これまた大きな文字で書かれて立っていました。このほとんど「お気楽」とも思える看板の存在にもかかわらず、「まだ安心は出来ない」という気持ちがとにかくありました。その後会場に入りこれといったアナウンスもなく開演時間を告げるブザーがなりました。この時、突然場内アナウンスが始まった時には死ぬほど驚いたのですが、それは「アラーム付き時計のアラーム解除のお願い」でした。このためすぐに安堵したのですが、このアナウンスが始まった瞬間、会場全体が一瞬凍りついた雰囲気になったことからみて、会場にいる全員が自分と同じ気持ちだというのこのときはじめてがわかりました。しばらくしてオーケストラが現われ、そしてテンシュテットをこよなく尊敬する名コンサート・マスター、デヴィット・ノーランがあらわれ、その後チューニングが行われ、後は指揮者の登場待ちとなりました。ですが、この場に及んでもまだひょっとするとあらわれるのは、じつはスラットキンではないのかと、ほんのすこしではありますが思っており、気持ちは「たのむからテンシュテット出てきてくれ」という念でいっぱいでした。この間の会場は異常な緊張状態に陥りました。

 そしてしばらくしてついに舞台にテンシュテットがゆっくりと姿をみせました。この時の会場の凄まじい拍手と歓声は演奏前としては異例なものとなりました。それは死地から生還した一人の人間をたたえる心からのものであったように感じました。拍手がおさまると、テンシュテットは指揮台に上がりそして、譜面台上の楽譜をめくり「エグモント」の指揮をはじめました。それはけっして大きな音ではないものの、きわめてしっかりとした確信にみちた、そして自らの復活を告げる力強い音でした。

 この演奏会は自分の経験したものでも特別なもののひとつとなっています。なかでもホルン6人を2人のトランペットの左に横一列に並ばせた「英雄」は特筆すべきものでした。特に第二楽章。最初の弦が鳴った瞬間、一瞬ぞっとしてしまいました。透明感のあるそれでいて、しかも深淵を覗き込むような、なにか底知れない戦慄のようなものを感じてしまったからです。それにしてもこの時の「英雄」はテンシュテットが自分をこの曲になぞらえてるのではないかと思った程でした。これは死地からの生還を果たしたものだけに許される音楽だったのでしょうか。いまでもこの演奏はある意味特別なものとして自分の記憶に深く刻み込まれたものとなっています。

 そして最後にホルン6人が全員で吹奏するという壮大な終楽章もあまりに素晴らしく、未だにこの「英雄」を超える演奏に出くわしたことことがないのではないかと思われるほど、完全に圧倒されつくしてしまいました。演奏終了後のスタンディング・オベーションと、それを見つめながらなかなかその場を立ち去ろうとしないオケの面々の姿は、今でも強く印象に残っています。

 この日本公演は、途中多少のアクシデント(譜面台の止めの不十分さによる、譜面台上部の落下等。)はあったものの、空前の大成功となりました。これはサントリーホールでの公演の事で、これはNHKが録画、後にビデオにもなりましたので、御覧になった方もけっこういらっしゃるのではないでしょうか。


●テンシュテットの思い出
http://www003.upp.so-net.ne.jp/orch/page026.html
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